③手術〜ICU
入院直前に父が風邪をこじらせてしまい、どうなることやら気を揉み奔走しましたが、とにかく天と母と姉に託して病院に入りました。
物心ついて初めての入院です。
外科的手術なので、おおよその入院期間も見えていて、旅行のような気分です。
翌日の手術に備えての検査に、ご飯にお風呂。
スタッフの皆さんも親切で、何より病院食が美味しくて嬉しい。
お風呂もゆったり浴槽に浸かれて、こんな贅沢をしてていいのかしらと思うくらいです。
とはいえ、術後数日はシャワーすら使えないので、1つ1つ最後のお楽しみ感があります。
ゆっくり眠って手術当日。
下剤を飲んで出すものを出して、点滴をしつつ、立ち会ってくれる姉と面会して、手術室へ運ばれました。
手術台に移され、色々な装置を付けられ、頭の上から麻酔の先生の声がします。
左手の甲に刺してある点滴から、麻酔が入ってくるそうです。
麻酔医「じゃぁ麻酔が入ってきまーす。入るときどうしても痛いですからね〜。」
あいたたたたた…、本当に結構痛いんですねぇ。
痛みが手の甲から手首、肘に向かって広がって、血管が網目状なのが痛みで解ります。
麻酔医「堤さ〜ん。」
私「はーい。」
麻酔医「何回か呼びますからね〜。」
麻酔の痛みが二の腕から脇目掛けて上がってきます。
麻酔医「堤さ〜ん。」
私「(はーい。)」
答えたつもりが、声になりません。
スタッフ「終わりましたよー。」
と同時に、顎を思いっっっきり殴られたような激痛と、首を絞めて地面に押し付けられているような苦しさに襲われました。
声にならないはずです、口にはまだ管が入っていて、
スタッフ「痰、吸引します。管、抜きまーす。もう1回痰吸引しますね〜。」
もう訳がわかりません。
そっか、手術終わったのか。
手術台の横にはICU用ベッドが迎えに来ていて、そこに移されて手術室を出ると、オペ看護師さんから担当看護師さんに引き渡されます。
担当看護師さんはこの病院に来て間もないらしく、なんだか指導されている会話が聞こえます。
オペ看さん「◯◯入ってなかったよ。」
担当さん「ぁ・・・、すみません。」
何だ?何が入っていなかったんだ?
気になりますが、尋ねる元気はありません。
ICUに運び込まれてしばらく経ったでしょうか、先生が来られて、手術は無事に終わったよと教えてくださいました。
私「ありがとうございました。…わぁ、先生!声が出る!!ありがとうございます!!!」
その後、姉が面会に入って来て言葉を交わすと、泣きながら喜んでくれました。
甲状腺全摘なので、手術には3〜4時間かかるかもと聞いていましたが、姉によると2時間くらいで終わったそうです。
面会用のガウンを着たままICUを出て帰ろうとしている姉の気配に、相変わらずヤらかすなぁと苦笑いしつつ、長い夜が始まりました。
全身麻酔で挿管した後は、とんでもなく痰が出るのですね。
普通なら咳払いで出すことができますが、何せ喉は激痛です。
痰を出すのも、ティッシュを取るのも苦労です。
元々耳鼻咽喉科系が弱いので、喉の痛みはお馴染みの扁桃炎の超絶酷いときのような感じ。
首元を切って力が入れられないので、頭を支えられなくて、頭は枕にめり込むような鈍痛です。
予想外に痛かったのは顎。
最初は傷のせいかと思ったのですが、たぶん、挿管されて口を開けっぱなしだったからかなぁと推察。
それプラス、全身麻酔から醒めていくときの体の痛みがあちこち時間差で現れます。
脚、腰、肋骨も酷かったなぁ。
術前術後の心得として、自律神経が整うよう腹式呼吸の指導がありました。
呼吸法なら慣れたものです。
いつものセルフケアで、動ける範囲は体をさすり調整しながら、動かせないところは呼吸でどうにか。
患部を扇いでみましたが、ここまで痛いと扇ぐ程度の気でも激し過ぎました。
手をかざすだけでも、圧迫感を感じます。
究極に傷んだときだからこそ体験できることです。
扇いだり手をかざしたりもやっぱり効いているんだと、まるで人体実験です。
なんとか痛みを逃しながらうつらうつらして、長い一晩を越えることができました。
自分のケアがこんなに役立つものとは、驚きました。
心得があって良かったなぁとしみじみです。
朝になって、ベッドを少しずつ段階的に慣らしながら起こしてもらいます。
ダイビングで深い海から上がってくるとき、少しずつ深度を上げて、圧力に慣らしながら浮上する「減圧停止」みたいな気分です。
ようやく直角くらいまで起きて、水面に浮上してホッとしたような気持ちになったら、朝ご飯が運ばれて来ました。
入院説明の資料で、手術の翌朝からお粥と書いてあったので、もう口から食べるのか?重湯かなと思いきや、どんぶりいっぱいの五分粥と、カボチャの煮物とお麩の味噌汁と冷奴と牛乳(だったかな)。
食えるかーっ!
元気な日常でも、朝からこんなに食べません。
でもほらこの病院のお食事美味しいので、必死に飲み込める分を少しだけいただきました。
面会に来てくれた家族と会って、尿道の管が抜けて、お昼前には自力で歩いて一般病室に戻りました。
後から他の患者さんたちに訊いたら、皆さん麻酔から起こされたのはICUで諸々整った後だったと。
なぜ私だけ管を咥えたまま起こされた?
疑問です。
苦しかったけど、お陰でオマケ体験までできたので、少し得した気分ではあります。
つづく。
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